東アジアで加速する米軍基地強化に抗して
京都 米軍Xバンドレーダー撤去を求め集会
闘う相手はひとつ! 韓国・沖縄と共闘を


 Ⅹバンドレーダー(弾道ミサイルを探知・追尾するための高性能レーダー)が、青森県つがる市の米軍車力通信所についで京丹後市の空自経ケ岬分屯地に配備されてから二年半余。「防衛」の名の下にいっそうの日米軍事一体化・拠点強化がおし進められている。配備計画をめぐる地元の労組、漁師組合、市民団体などによる再三の質問や要請が黙殺されるなか、配備工事から運用までが強行されてきた。防衛省は「米側からは何も聞いていない」の繰り返し。基地に近い丹後町尾和や袖志地区では米軍人・軍属による交通事故が目に見えて増えている。米軍関係者には行政罰が科されない日米地位協定の不平等性によって生活を脅かされる住民の声があげられている。 【編集部】

 過疎化になやむ京丹後市の海浜地区を、日米両国家は四年五か月前に地域断片的軍事化の対象にした。そして二年七か月前に、米軍Xバンドレーダーの運用がはじまった。平穏であった地区は、両国家の思惑が絡んで、思わぬ方向へと追いやられている。
 日本で東アジア情勢といえば、朝鮮半島がとりあげられ、なにかあれば朝鮮バッシングのオンパレードにもなる。これは一種の目くらましだと思う。日米両国の一番の関心は中国である。この四半世紀に中国が達成した経済成長の結果、今年のIMFが予想するところでは、世界GDPの二五%の米国に次ぐ一五%を占め、日本は中国の半分以下の六%半ばにしかならないという。オバマ政権が西太平洋(アジア)回帰を政策にしたことも増強をみせる中国と無関係でない。地球規模で獲得した自国の特権・利権を維持・拡大するにあたって、突出した軍事力を担保としてきた米軍は、国家財政が窮迫したいまでは、国家予算の軍事費割合を従前どおりに賄えず、削減ありきの現実と直面させられている。二〇二〇年代以降の世界を睨んでヘーゲル国防長官(当時)は、米軍の編成と同盟国軍との連携について見直すことを二〇一四年に決めた。この根本的な見直しに派生して、経ヶ 岬米軍Xバンドレーダー基地の設置決定があったのだろう。
 日本は日本で、米国の意向との間合いを計りながら、不透明な将来世界像のなかで東アジア経済権益維持と拡大をもとめて、そのための軍事力強化路線へと舵を切る。その前に立ちはだかるのが中国という存在であろう。海外派兵ができ、交戦が許される国づくり、これが憲法「改正」の一番の動機であり、そのためには東アジア情勢が緊張関係で包まれることを必要としている日本の姿がそこにある。
 航空自衛隊経ヶ岬分屯基地の一年の変化をみると、隣接する米軍基地の施設がどこか仮設っぽいところがみえるが、基地拡張工事が進む分屯基地はそうではない。鄙びた様相が一変して、巨大なアンテナ塔二基、立派な通信局舎などが完成し、さらにパラボラアンテナの建設工事もひかえているという。
 米軍基地の建設反対運動は、二〇一三年四月二十一日の〈米軍基地建設を憂う宇川有志の会〉の立ち上げにはじまる。その後、〈丹後〉、〈京都〉、〈近畿〉の各連絡会の立ち上げが相次ぎ、関西の運動へと発展した。わたしは〈京都連絡会〉からの案内のもとに、不十分ではあるが、その活動に参加している。今年の六月も、〈6・4京丹後総決起集会〉に参加した。そのときのことを最後に記したい。
 会場の久僧公民館に集結したのは、およそ三〇〇人。〈宇川有志の会〉の永井友昭氏、沖縄から〈島ぐるみ会議〉の高里鈴代氏、韓国からの四人(〈THAAD配備反対金泉対策委員会〉、〈円仏教対策委員会〉)の六人が集会での報告をおこない、たたかいの様子を語った。わたしたちは、その後の予定として組まれていた米軍ゲート前の抗議行動に出発し、中浜、尾和の集落を抜けながら二キロの道程をデモ行進した。
 総決起集会の一日は、京都駅前を出発して帰着するまでに一三時間を要する長丁場だが、疲れをおぼえなかった。集会が沖縄からだけでなく、四名を韓国から迎えて日韓活動家の交流が実現できたからだと考えている。その四人の話は、星州にはじまって金泉、大邱、全国へと「THAAD決死阻止全国行動」が急拡大する様子、毎晩のローソク集会の模様、それが毎週のローソクデモにもつながり、「ローソク革命」をうみだす、そういう運動の盛り上がりを当たり前のできごとのように語る。聴衆は、韓国民衆の粘り強いたたかいに聞き入り、やがて、基地のたたかいの対象は京丹後、沖縄、韓国でも同じであり、同じことが異空間の場所で繰り広げられている事実を知らされる。京丹後、沖縄、韓国のたたかいはバラバラにあるのではなく繋がってあるのだ。その思いがつよまるなかで、わたしはたたかうもの同士の連帯感が会場のなかに広がっていくのを感じずにはおれなかった。【木原健一】

(『思想運動』1005号 2017年7月15日号)