「共謀罪」の強行可決断固糾弾!
安倍政権打倒の闘いを前進させるために

階級的観点の確立こそが闘いの力


 三〇度を超える暑い日差しとなった六月十日(土)午後、労働組合員、市民運動団体のメンバーあるいは家族連れなど、多くの人びとが国会周辺に集まった。午後二時から始まった「止めよう! 辺野古埋立て 共謀罪法案は廃案に! 6・10国会大包囲」は、「国会正門前」をメインエリアにして、「首相官邸前」、「議員会館前」、「国会図書館前」の四つのエリアにステージを設け、同時進行で行なわれた。各自が所属する労組や団体が指定した、あるいは自分の好みで選んだエリアに参加した参加者は、ステージで行なわれる発言に耳を傾けた。そして「辺野古埋立て NO!」「共謀罪NO!」と書かれた黄色や青のプラカードを掲げ、また「辺野古に基地はつくらせないぞ」「共謀罪は絶対廃案」などのコールを発し、沖縄の闘いの現場で歌われている「座り込め、ここへ」を歌い、安倍政権への強い抗議の意志を示した。

沖縄の不当な弾圧は共謀罪の先取り

 「国会正門前」エリアでの包囲行動は、ステージでの沖縄三線演奏によるプレ・ライブの後、主催団体挨拶から始まった。挨拶のなかで、「不当に逮捕された沖縄平和運動センターの山城博治議長への起訴状のなかに、共謀との言葉が何度も使われている。沖縄の闘いに対して、共謀罪が先取りして使われている。山城さんは六月中旬にジュネーブの国連人権理事会で人権侵害について証言することが予定されている」等が報告された。
 沖縄から参加した「基地の県内移設に反対する県民会議」事務局長の大城悟さんは、「今日の午前に沖縄名護市の米軍キャンプ・シュワブゲート前で『国会包囲行動に連帯する辺野古現地集会』が一八〇〇名の参加で開催されたこと、そして辺野古の座り込みが一〇七〇日を超えていること、権力の違法な弾圧によりきびしい闘いが続いているが、沖縄県民は負けるわけにはいかない」と、闘う決意を力強く述べた。
 オール沖縄会議共同代表の稲嶺進名護市長は、「名護市民、沖縄県民の闘いへの県外からの多くの支援に感謝する。権力の暴力に対し、沖縄県民は非暴力で抵抗している。わたしたちは、勝つまであきらめないことが負けない闘い方であることを知っている」と述べ、引き続いての支援を訴えた。
 「共謀罪NO! 実行委員会」からは、海渡雄一弁護士が「共謀罪が問題なのは、大きく言って、どの行為が対象になるかが不明であること、国民への監視が強められることにある。政府は強行可決を狙っているが、絶対に阻止するため沖縄と連帯して闘いましょう」と廃案に向けての闘いを呼びかけた。
 国会議員からは、近藤昭一・衆院議員(民進党)、笠井亮・衆院議員(共産党)、糸数慶子・参院議員(沖縄の風)らが挨拶した。社民党と自由党は他のエリアで挨拶が行なわれたということだ。
 各界と地域から、沖縄に連帯する活動と共謀罪廃案に向けての闘う決意の発言が続き、最後に、沖縄から安次富浩・へリ基地反対協共同代表が、「沖縄は安倍と真っ向から闘っている。いま闘わずして、いつ闘うのかという気持ちで闘っている。沖縄の闘いは、民主主義を民衆の力で作りあげてきた。それがオール沖縄に結集した。オール沖縄の闘いを全国に広げましょう。沖縄県民だけでなく、ここにいる皆さん、共謀罪、原発、戦争法に反対する人びとでこの国を変えていきましょう」と、オール沖縄に続く全国での闘いを訴えた。

キャンドル・デモから何を学ぶのか

 平日に勤務している人たちが結集できる土曜日の午後に開催された今回の「国会包囲大行動」は、一万八〇〇〇人の参加だった。昨年二月二十一日( 日) 午後二時からの「『止めよう! 辺野古 埋立て』国会包囲実行委員会」「戦争させない・九条壊すな! 総がかり行動実行委員会」の二団体が主催した「止めよう! 辺野古埋立 2・21首都圏アクション国会大包囲」には二万八〇〇〇名が参加した。
 今回は主催団体に沖縄から「基地の県内移設に反対する県民会議」が加わり、さらに、「共謀罪NO! 実行委員会」が協賛した。枠組みは「大きくなった」(主催団体挨拶)が、参加人数は減少した。参加人数がすべてではないだろうが、今回の行動で前回より減少したことの分析が必要ではないか。
 主催団体挨拶のなかで、「韓国民衆は非常に困難な状況のなかで、キャンドル・デモにより、最初は数万から始まったが一〇〇万、二〇〇万でもって朴槿恵政権を打倒した。きびしい状況でも、わたしたちは韓国民衆の闘いに学び、闘い抜かなければならない」との発言もあった。確かに、もし一〇万人、いや一〇〇万人を超える労働者・市民で国会を幾重にも包囲する行動を連続して行なうことになったら、安倍政権打倒も現実味が出てくるだろう。
 重要なことは朴槿恵を罷免に追いやった韓国の継続した大衆闘争は自然発生的に起きたのではないということだ。キャンドル・デモが最終的には二〇〇万人を超える大衆闘争に発展した背景には、韓国社会の「積弊」と呼ばれる構造的矛盾があり、その一端が朴槿恵―崔順実ゲートで明るみに出て大衆的怒りが噴出し、それに民主労総や全農などの基層大衆組織の闘いとセウォル号遺族やTHAAD強行配備に反対する星州住民などの粘り強い闘いが重なり合い巨大なエネルギーが生み出されたのだ。その巨大なエネルギーを根底で支えているものは何か? それは人民による闘いの歴史の継承であると考えたい。それは、沖縄の闘いのありようにも通じるものだ。

国会内外で全力で闘いを進めよう

 幾重にも積み重なる日本帝国主義の侵略・植民地支配の歴史のなかで、無慚にもそれに屈服し侵略の尖兵になった歴史と、それに抵抗し闘った歴史を掘り起こして人民による闘いの歴史を確立すること、その基礎の上にこんにちの闘いの陣形を構想し創り直すこと、このことがいまわれわれ日本人民に問われている。学者・知識人は「水戸黄門」のうじゃじゃけた話をしているより、そうした運動再生のために全力を尽くすときではないか。
 安倍政権は、森友疑惑、加計疑惑など、ひと昔前の政治状況なら総辞職の一歩手前まで追い詰められた状況にある。
 わたしたちには、どのような闘いを構築して安倍退陣を実現するか。そして、独占資本の意を受けた政権ではなく、真に労働者・市民が主人公となる社会を目指す政権を作れるかどうかが問われている。わたしは、二つの考えを提起したい。
 一つは、共謀罪に反対し安倍政治を変えようとしている国会議員のとるべき行動についてである。①すべての国会審議を拒否すること、②本会議での強行採決の際は牛歩戦術など最大限の抵抗をすること、③議員辞職の表明、④最後はハンガーストライキで闘う、この四つである。もちろんどれもたやすく実行できるとは思わないが、各議員が自分の選挙区に戻って政権と多数派の横暴を告発し、議員の職をかけて選挙民と現在の政治を変えるため真摯な論議を重ねることが、現在の状況を変えることに繋がるのではないか。
 二つ目は、労働者・市民一人ひとりの共謀罪廃案と安倍政治を変える決意についてである。今回の主催団体の挨拶では「闘いは山が続く『高原闘争』を」との提起がされた。
 昼夜を問わず闘いに参加するには、真剣な論議と決意が必要だろう。退職者など日中動ける人は、自分の健康と相談しながらできることを実行することになるが、勤労者は闘いの場に参加することそのものが闘いになる。労働組合がある場合は執行部でストライキ権を確立して行動に参加することを検討すべきだ。労働組合のない場合は、組合を新たに作ることを追求しよう。
 いずれにしても労働者階級の階級的観点の確立なしに、安倍らブルジョワ支配階級を打倒することはできない。
 労働の現場で、国会の内外で、共謀罪の廃案と沖縄県民に連帯して辺野古新基地建設を止めさせる闘いを全力で進めよう。 【田沼久男】

(『思想運動』1003号 2017年6月15日号)