朝鮮学校差別政策にNO!
平和への思い萎縮させる歴史の逆行


 千葉市は四月二十七日、千葉朝鮮初中級学校の地域交流事業に支出する補助金について、昨年度分の約五〇万円の交付を取り消すと発表した。千葉市は交付取り消しの理由として、①昨年十二月に行なわれた美術展で日本軍「慰安婦」問題に関する一五年末の日韓政府間「合意」を否定する展示があったこと、②今年二月の芸術発表で朝鮮民主主義人民共和国(以下「朝鮮」)の最高指導者を賞賛する曲が歌われたことを挙げた。
 千葉市は交付取り消しの根拠は「千葉市外国人学校交流事業補助金交付要綱」だとしている。
 千葉市が取り消しの理由の一つとしている「ウリハッキョと千葉のともだち展」は千葉大学、町内会、大手マスコミなどが多数支援をしているもので、第一回~第三回を三年連続で市が「千葉市国際交流事業」として認定してきた。第三回は千葉市美術館の市民ギャラリーで開催された。期間中の来場者数六五〇人余りのうち、四割は日本人で、近隣の日本学校五校からの二二〇点を合わせて、会場には一〇〇〇点を超える作品が展示され、美術作品を通した地域間・国どうしの交流が深められる場となってきた。
 今回の展示で市の職員が問題とした箇所などの詳細はここでは省略する。それは今回の取り消しが、二〇一〇年以来つづく朝鮮高校の無償化除外、各地方自治体の朝鮮学校への補助金停止と本質的に同じであり、千葉朝鮮初中級学校の運営には何ら問題はないからだ。同展が開催されてきた経緯や展示の趣旨を見れば、千葉市の交付取り消しはまったく不当きわまりない決定である。
 取り消し当日に行なわれた記者会見で千葉市長は、「日韓『合意』を否定するような説明がなされているので地域交流事業の趣旨に明確に反する」と答えた。
 ここには国が決めたことには従うべきであり、これに反するものには制裁を、という在日朝鮮人への弾圧を正当化し、また今後「共謀罪」が成立すれば、あらゆる平和・人権団体、労働組合に適用されるだろう論理が使われている。問題は千葉市だけでなく、また朝鮮学校、在日朝鮮人の団体・個人だけの問題ではない。
 今回の千葉市の美術展・芸術展への補助金停止問題の核心は、簡潔にして明白だ。一九一〇年に日本が朝鮮を植民地支配し、二〇〇万人以上の朝鮮の人びとが日本に存在した事実。そして朝鮮学校がその歴史のなかで存在することを余儀なくさせられたという事実。
 日本国内にとどまらず、日本が海外侵略した各地へ、朝鮮人をはじめとしたアジアの人びとを強制連行し、強制労働させた事実。日本軍従軍「慰安婦」もまた、各地へ無理やりに連れて行かれたのであり、日本政府による謝罪と補償が、戦後七〇年経っても誠実に行なわれていない事実。そしてこのような歴史的事実を踏まえ、アジア・太平洋戦争で日本軍が行なった戦争犯罪を、日本政府と日本国民が真摯に反省し、その反省を後世まで伝え「ふたたび戦争の惨禍を引き起こさない」と決意することだ。現代を生きるわたしたちがこの大きな目標で一致をしようと努めるのであれば、千葉朝鮮初中級学校への補助金支給はまったく正当なものだ。千葉市は平和を希求する日本国憲法の精神のもと、ただちに地域交流事業への補助金を支給し、二〇一二年から停止している補助金も即刻再開させるべきだ。 【廣野茅乃】

(『思想運動』1001号 2017年5月15日号)