真の戦争挑発者はだれか?
朝鮮に対する米日帝国主義の戦争策動と闘おう


 米国トランプ政権は、四月二十九日で政権発足から一〇〇日目を迎えた。四月六日のシリア爆撃、そして朝鮮を標的とした戦争挑発に、その軍事・外交戦略の侵略的本質が現われつつある。国連緊急安全保障理事会において、シリアでの化学兵器使用疑惑が論議されているさなかでの突然の単独攻撃であり、いまにいたるもアサド政権による化学兵器使用の証拠は何ら示されていない。七日、国連安保理でボリビア国連大使は、二〇〇三年のイラク戦争開戦前に当時のパウエル米国国務長官が、イラクに大量破壊兵器がある(実際はなかった)と発言する写真を掲げて米国を批判した。
 安倍政権はこの米国の明らかな侵略行為に対してその「決意」を支持するという、またしても愚劣きわまる姿勢を貫いている。わたしたちはこれを断固糾弾する。

シリア攻撃の意図

 この数か月、イラク、シリア、イエメン、アフガニスタンにおいてペルシャ湾に展開する米軍空母機動艦隊からのイスラム国(IS)やアルカイダ支配地域への攻撃が拡大していた。トランプ政権は、このIS掃討を最優先しロシアとの関係改善も視野に必ずしもアサド政権を敵視せずその容認さえ示していた。したがって、シリア・アサド政権軍の空軍基地を標的にしたミサイル攻撃には、明らかな政策転換がはたらいたと見るべきだ。
 トランプ政権では、内政における支持率低下、選挙前の公約がこう着状態にあり、ロシア癒着問題での大統領補佐官の解任や国家安全保障会議(NSC)内部での意見対立も表面化している。シリア攻撃からは、こうした政権基盤のぜい弱な状態を要因として、オバマ前政権との違いをアピールし自らの支持率低下を食い止めようとする意志が読み取れる。
 大統領選でウォール街の金融資本と軍産複合体、既得権益層と闘うポーズを示し得票を伸ばしたトランプ政権だが、とどのつまり米独占資本の意志に背くことはできないし、米国の政策を根底で決定するものが独占資本家階級であることを「トランプの一〇〇日」は示している。

朝鮮への「砲艦外交」

 シリア攻撃が開始されたまさにその瞬間にトランプと習近平が初めて相まみえる米中首脳会談が開催されていた。主要議題は朝鮮問題であった。トランプ政権は、アジア太平洋地域への関与を継続するが、これまでの約二〇年の対朝鮮政策は失敗で、「非核化なしでは交渉に応じない」とするオバマ政権の「戦略的忍耐政策」とは決別し、「すべての選択肢がテーブルの上にある」との軍事的圧力で脅す「力の外交」を誇示している。十三日にはアフガニスタンで、ISの地下施設の破壊を目的として大規模爆風爆弾「モアブ」を初めて使用したのもその一環に他ならない。
 しかし、わたしたちが何度でも確認しなければならないのは、朝鮮に核政策をとらざるを得ないように仕向けてきた張本人こそ米政権であるという事実である。朝鮮は一貫して朝鮮戦争における休戦協定を平和協定に変え、戦争状態の終結を提案し、朝鮮抹殺策動ともいうべき米韓合同軍事演習の中止を求めてきた。しかし米国は、そのまっとうな要求を拒絶しつづけ、朝鮮敵視政策をさらにエスカレートさせてきた。そのねらいは、自主独立を貫く社会主義国・朝鮮をつぶすことにある。
 トランプ政権は、「朝鮮による核・ミサイル開発の放棄を迫る」ポーズを喧伝しながら軍事的包囲網を敷いている。原子力空母カールビンソンを朝鮮半島周辺に向かわせ、韓国釜山港には米海軍原子力潜水艦ミシガンの入港、さらに韓国大統領選前に前倒しとして高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)の一部装備の現地搬入を開始した。言うまでもなく沖縄をふくめた在日米軍基地は準戦時体制に入る。米太平洋軍のハリス司令官はB52爆撃機の派遣を決め、自衛隊がそれを護衛するよう要請した。こうしたトランプ政権による「砲艦外交」ともよぶべき朝鮮への戦争挑発を断じて許してはならない。一歩間違えば核戦争につながりかねない危険な状況をつくりだしている者こそ米国である。

朝鮮半島危機を利用・煽動する安倍政権

 米政権による戦争挑発によってもたらされた「朝鮮半島危機」を最大限に利用し、なおかつ自らも煽動をエスカレートさせているのが安倍政権だ。
 その安倍政権に追従するマスメディアが醸成する「危機」にからめとられている日本社会の思想状況は非常に危険である。この「戦争情勢」を絶好の機会ととらえ、かつ自らもそれを煽りながら、戦争遂行体制をつくりあげるという初志を貫徹する安倍政権・独占資本一体の意図をこそ見抜き、それに抗することがわたしたちの喫緊の課題である。安倍政権は仕方なく米政権に追随しているのではないのだ。
 二十一日菅官房長官は、「ミサイル落下時の対応策」を発表し、「着弾の可能性がある場合、頑丈な建物や地下街に避難し、建物がない場所では物陰に隠れて地面に伏せるよう要請」した。また安倍首相は国会で、「北朝鮮がサリンを弾頭に装着して攻撃できる可能性」などと発言した。わたしたちはこれら悪辣きわまる「朝鮮脅威」キャンペーンを満腔の怒りをもって糾弾する。限りなく朝鮮政府をおとしめ、そうすることによって朝鮮に対する日本人民の敵意を惹起・煽動する。朝鮮に対するこれ以上ない侮蔑・敵視表裏一体の煽動を通じて、安倍政権が成し遂げようとしているものこそ、戦争遂行体制の構築に他ならない。
 現に、「共謀罪法案」をはじめとした治安弾圧体制づくりに拍車をかけ、「共謀罪」の先取りである弾圧体制をしきながら、沖縄・辺野古新基地建設のための護岸工事を強行している。さらには四月二十七日、朝鮮半島近海に向けてフィリピン海を航行している米海軍原子力空母カールビンソンと、海自護衛艦「あしがら」「さみだれ」二隻が合流し通信などの共同訓練を実施した。果ては、朝鮮のミサイル基地をたたく敵基地攻撃能力の検討や弾道ミサイル防衛の強化、朝鮮への武力攻撃やむなしとの方向へ、かつてなく強力に世論を誘導しようとしている。
 「朝鮮脅威」キャンペーンにからめとられ、朝鮮戦争反対の明確な主張にもとづく運動をつくりえていないのが、日本の平和運動の現状である。
 真の戦争挑発者はだれか! 戦争で利益を得る者たちこそ米日独占資本家階級である。朝鮮を孤立させてはならない! 朝鮮を軍事的政治的に包囲しようとする米日政権の策動に断固反対しよう。 【逢坂秀人】

(『思想運動』1000号 2017年4月15日-5月1日号)